手のひらから。

まだ間がないから、背中はあたたかい。


でも、違う。

最後に触れさせていただく顔は、違う。


ほんとに、ほんとにつべたい。


手のひらにたっぷりと保湿剤をふくませる。
息を止め、包みこむようにふわりと私は手を置く。


皮膚の表面で感じるそれとは全く違う。
あらゆる思考も流れも空気もガランとなる。
空白で、何もなくなる。


つべたい。


空白。
その後に、すーいと温かい気持ちが込み上げる。
再び、思考や流れが巡りはじめる。

手は顔に触れたまま。
それを静かに内で感じたら、再び手を動かす。


それは時間にすると、ほんの一瞬。
周りの誰にも気づかれることはない、と思う。


患者さん
親戚
友人


空が少し抜けた青さになって、1週間。
この温度に触れさせていただくことが続いた。


それぞれがそれぞれに重ねた時間を閉じる。


きっとこの瞬間に慣れることはないだろう。
それでいいし、それがいいと思う。


オツカレサマ。

アリガトウ。

私もそのうちにマイリマス。


だから
もう少し
今は
こうして
いさせてもらえたらとオモイマス。


最近、ハンドクリームを使うようになった。


遅まきながら。
手を大事にしたいなあと思うようになった。

Cui Cui

Cui Cui

こうした時間の後は、気がつくとパラパラとめくっている。

そして、少しだけヒトの温度が恋しくなる。