欲張りなんやけども

或る日

白い巨塔病院への入退院を繰り返し
肝臓がん末期となり
その人が選んだのはお家で過ごすこと


クーラーは、ない
かたかたと力なく回る扇風機が一台


今年はアホみたいな暑さで
程なく熱中症
点滴しながら肺炎併発
それでも大好きな三ツ矢サイダーはむせながらも飲む


みんなで知恵を絞り何とか冷却作戦

奥さんは姉さま女房の90歳
少し歩きづらい足をひきずりながらも暇さえあれば本人に


サイダー飲むか?


むせながらも奥さん、懸命に小鉢で飲ませる
吸い飲みとか、ストローでなくて、小鉢。


少し熱がひいてきて奥さんの名前をしきりに呼んでる


おーい、徹子がはじまるよ



かたかた、かたかた、かたた…


扇風機が回る部屋で、奥さんはベッドの傍に腰掛けて2人して“徹子の部屋"をじっと観てる


暑くて


それはそれは暑くて


一般的には療養とは程遠い場所


でも、本人にはかけがえのない場所


徹子をじっと観てる2人


ただただ、この時間を大事にしたかった
それだけなんだと


誕生日のプレゼントに風呂を希望し、座るのもやっとこさの中、ひとっぷろ

湯灌を自ら済ませて


翌朝、眠るみたく逝った


家での看取りは難しいのかな、と思っていたのだけれど


本人の思いが奥さんや白い巨塔病院の先生も動かしてしまった


想定外なんて想定内


人を看るのは人でありたい
出会いも別れもご縁なのだから


ということで、私はこの仕事を続けている
これはもうカラダがそうなるのだから仕方ない


しかしながら


えぜこ的営みが諦めきれず


宇治にも素敵なお店はできているのだけど



ぼんやりできる居場所はあるのかな?


てな思いがにょきにょき


てなわけで、両立を思案中