お師匠
久々に畑に行ったら、自分の列だけほうぼう、ぼうぼう。
畑をぐるりと見渡すと、夏野菜がごろごろ、と。
この畑は、母の従姉弟が手を入れていらっしゃる。
いつ来てもきちんと、手を入れてはるので、すこぶる風通しがよい。
しばし、クワにもたれてぼうっと見とれてしまう。
幼い頃のこの従姉弟のおじさんのイメージは、恐そう、だった。
整った顔立ちで、背が高い。
笑うと優しそうなのだが、無口なので、なんだかぐわっと迫力のある感じ。
でも、宇治に移り住み、畑をしてみたいと言ったら、快く貸してくださった。
しかも、もう、畝も作ってくださっていた。
子どもの頃のイメージがあるので、お礼を言いにいくのもちょっと緊張した。
でも、畑であったおじさんはとてもステキな人だった。
相変わらず、無口ではあるが、優しい。
わからないことは聞くとていねいに教えてくれるのだが、あとは見守ってくれる感じ。
一緒に畑にいても、それぞれの作業を黙々とこなすのだが、不思議と安心感がある。
畑の畝や実った野菜を見ると、育てた人柄がしのばれる。
おじさんの畑はいつも整然としていて、人柄そのままの誠実なお野菜ができる。
こつこつと、たんたんと、たゆまずに耕す。
定年後から畑を始めたとは思えないくらい。
今では、すっかり“師匠”と尊敬し、慕っているのだ。
こういう人が近くにいるというのも、いいなあとしみじみ。
↓うーん、シブイなあ。
えぜこの定食で使う野菜の一部は師匠作のもの。
自然に甘く、濃ゆい味がする。