ごパン。

細胞がヨロコブ。という瞬間が時にある。
言葉とか感情とか、もういろいろなものを超えて、自分の体の細胞がぶるぶるわさわさっとして、かーっとする感じ。


このパンを初めて食べたとき、そうだった。

おいしいパン屋があると、友人のバイクに乗せて連れて行ってもらったパン屋さんは、小道を入った小さなお店に小さな暖簾のひっそりとした佇まい。小さく「天然酵母パンの店 こせちゃ」とある。

決して広くはないお店に、並んだパンの顔は、それまであまりみたことのないものだった。
クリームやバターでてかてかして華美なよそ行きなパンではなく、お母さんがぎゅっぎゅうと握ってくれるおにぎりのような素朴なパン。

もちっとしていて、ゆっくり噛み締めるごとに風味が増す。優しくて控えめだけど、しっかりとそこに在るという感じ。それは、三角巾をきゅっと巻く彼女そのものな感じがした。


私はそのパンと彼女に恋をして、引越しの際も、迷わずその近くを選んだ。
これを恋といわずして何といおう。


お店はご自宅に併設されていて、お庭でパンを食べることもできる。
休日に自転車をこいで、お庭でパンをいただいて帰ることもしばしばだった。


初めて口にしてから8年くらい経ち、その間、天然酵母のパン屋さんもずいぶんと増えた。
いろいろなお店のパンを口にしてきたが、今でも変わらず私の“ごパン”は彼女の作るパンなのだ。


たぶんこれからもずうっとそうなのだと思う。
こういう人が一緒の時間を生きていることって、幸せだ…。


ぶるぶるっ

↓お庭のいちじく、目を見張る成長振りでした。イチジクのパンも楽しみだなあ。。。